土地改良区概要

水土里ネット愛谷堰(愛谷堰土地改良区)は、江戸時代の初期、平藩主内藤公の命令により三森治右衛門が6年の歳月を費やし延宝7年(1679)に完成したと伝えられる愛谷江筋(農業用水路)の管理と農村環境整備をおこなっている福島県知事の認可を受けた公益法人です。

 私どもの土地改良施設(農業用水路や堰、溜池など)は、飲料水や工業用水の安定供給、防火用水、洪水調整、地域用水、生活排水の排水路など、この地域に欠かせない重要な役割を果たしております。

 また、上流からきれいな水を市街地へ流しておりますので、繁華街のそばで、鮎やヤマメ、ウナギ、鯉、サクラマス等たくさんの魚や水生生物、蛍などの甲虫類など豊かな自然と身近に触れ合うことが出来る住民の憩いの場です。

愛谷頭首工(令和元年(2019年)11月19日 ドローンにて撮影)

台風19号豪雨(令和元年10月12~13日)により、夏井川、好間川、新川などが氾濫、一部決壊したが、全可動式の愛谷頭首工は、破損することなく水害を乗り切った。 昭和48年竣工ビデオの最後部ナレーションに「この頭首工は、将来、襲い来るであろう台風にもめげず人々の生活を支え続けてくれることであろう。」と締めくくっており、先人の偉大さに改めて敬意を称したい。

昭和48年(1973年)9月竣工_県営災害復旧事業 愛谷頭首工

目 次

❶ 沿 革

 1 地区の概要

  当地区は、福島県浜通り地方南部のいわき市平を中心とした夏井川右岸に位置する水田地帯である。夏井川は、阿武隈山脈大滝根山に源を発し80kmを経て、いわき市新舞子より大平洋に注ぎ込まれている。    

 上流部の水路周辺では、都市化による宅地造成や市街地の開発が進められており、受益面積は昭和初期の517haから現在331.5ha弱に減少している。

 愛谷頭首工、江筋の開削は、徳川時代の初期平藩主内藤公の治政下にあった時代、藩公の命を受けた三森治右衛門が5年の歳月を費やして延宝7年(1679)に完成したと伝えられており、夏井川左岸の小川江と共に当地方において最も古く、かつ大規模なものである。

 改良区としての受益面積は494ha、組合員数は777名で、平均耕作面積は0.5haと県内では中規模程度であり、専業農家9%、1種兼業農家7%、2種兼業農家84%となっている。近年、関係機関の指導のもと、休耕田にハウスによるイチゴ15haをはじめ、胡瓜等の野菜栽培が進められている。

2 組織の概要

江戸時代においては、平藩により管理運営され、明治に入り菊多磐前磐城郡長に引き継がれ、明治17年まで郡長管理が行われてきた。明治18年に区町村会法に基づく水利土功会が組織され、明治23年に水利組合条例に基づき普通水利組合となり、昭和26年まで組合管理が続けられてきた。昭和27年3月に土地改良区に組織変更され現在に至っている。

平成14年2月26日に夏井土地改良区を吸収合併

平成30年4月小川町土地改良区解散に伴い赤井地区編入

(1)受益地

いわき市平北白土宮前、上河原、知原、上平、宮田、札場、田代、塩取、穂積、ネキ内、西ノ内、堀ノ内、宮脇における一円の田

◆いわき市平山崎明シ内、田仲島、川田、沼田、矢ノ目、小才内、熊ノ宮、小茶円、金沢、馬場、鼠内、山岸、根木内、八ツ、谷田川における一円の田、畑

◆いわき市平菅波礼堂、宮前、九日田、明星町、数町、柿作、フケ、行人下、湯崎、籠石、西ノ内、寺入、菅波入、太郎作、太鼓田、井作、南作、永井、東作、稲荷前、腰巻、新屋敷、砂畑、永南における一円の田、畑

◆いわき市平荒田目山根、八反田、甲塚、反町、本町、大町、田中内北、田中内南、中田、石崎、高原、古川における一円の田、畑

◆いわき市平上大越岸前、八ツ手、沼畑、上袋、川久保、内代、塚越、五味作、石淵、石崎、大乗坊、北作、中丸における一円の田、畑

◆いわき市平下大越留塚、岸前、中北、中ノ町、山ノ神、沢帯、北横手、清水、南横手、正慶、川和久、深田、石田、根廻、細田、柳葉、北萱野、高畑、大麦畑、堀川、屋貸内、根岸、北作、南作、上ノ内作、南萱野における一円の田、畑

◆いわき市平藤間南町田、北町田、川田、横淵、柴崎、鯨、安養原、林、中谷地、沼田、川前、大平、千ヶ久保、新林、松原、北谷地、辰ノ口、筒前、堤下、中之内、トウボウジ、藤間作、内出における一円の田、畑

◆いわき市平下高久大平、北谷地、中谷地、南谷地、下原、原、牛転、大和久、水門、定田、原極、川和久、八幡、清水、中妻、久保ノ作、古川、袴田における一円の田 

※地図に記載はございませんが飛び地として

◆いわき市平赤井一の町、二の町、三の町、四の町、五の町、六の町における一円の田

❷ 目的(役割)

農業用用排水施設の維持管理並びに農業生産の基盤の整備及び開発を図り、もって農業の生産性の向上、農業総生産の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資することを目的とする。(定款第1条)

(2)土地改良事業の推移

昭和2年〜平成12年

平成15年〜令和4年

❸ 認可年月日

昭和27年3月28日認可(福島県指令耕第31号)

法人番号 9700150038158

登録番号 T9700150038158

❹ 性格

土地改良事業の施行を目的として知事の認可によって設立し、公共的公益的な業務を国から与えられ、解散は知事の認可を受けなければならず任意の解散が制限され、地区内にある土地の3条資格者は組合員とすると規定し加入を強制している。(土地改良法5条第1項、11条、67条第2項)

土地改良事業計画、工事等に関して県、県土地連の専門技術者の援助を求めることが出来る。(法7条第5項、47条、111条の9)

定款の定めにより賦課金、加入金、過怠金を課し滞納者には行政上の強制徴収を行う等の権限が与えられている。(法36条、39条)

改良区の性格から法人税、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、事業税等について非課税扱いとされている。

改良区の事業等報告の徴収、検査、解散命令等国・県の監督を受けている。(法132条〜)

これ等から改良区は、公共組合としての性格の強い団体である。

❺ 組織

改良区は、土地改良法第2条第2項に規定する土地改良事業及びこれに付帯する事業を行うことを目的として、組合員によって組織され、その組合員の代表である総代会において民主的に組合員の意志が決定される。また、運営は、役員によって行われる。

【 組織構成】

組合員(777名)、総代会(30名)

理事会(5名)理事長、庶務兼会計担当理事(一番理事)、工事担当理事(二番理事)、副会計担当理事(三番理事)、副工事担当理事(四番理事)

監事会(2名)総括監事、員外監事(税理士資格者)※現職は弁護士

用排水調整委員会(11名)

事務局(職員1名、現業職員1名、パート2名)

(1)役職員総代名簿

◆理事

理事長 箱﨑 博光 いわき市平菅波

庶務会計理事(一番理事)青木喜三郎(税理士) いわき市平藤間

工事理事(二番理事)鈴木 隆康 いわき市平下大越

副会計理事(三番理事)永山 典彦 いわき市平菅波

副工事理事(四番理事)宍野 正秋 いわき市平下高久

◆監事

総括監事 渡邊 喜男 いわき市平藤間

員外監事 大森 浩司(弁護士)東京都

◆職員

施設長兼事務局長 菅波 孝光(土地改良換地士、一級土木施工管理技士)いわき市平赤井

◆総代

1     加藤 俊則  いわき市平北白土

2    鵜沼 貞義  いわき市平山崎

3    馬上 総一  いわき市平山崎

4    渡辺 雄八  いわき市平菅波

5    齋藤 明   いわき市平菅波

6    庄司 隆男  いわき市平菅波

7    阿部 信英  いわき市平荒田目

8    矢吹 哲男  いわき市平荒田目

9    上遠野 英郎 いわき市平荒田目

10 鵜沼 良友  いわき市平上大越

11 鵜沼 公保  いわき市平上大越

12 木田 重光  いわき市平下大越

13 木田 一   いわき市平下大越

14 木田 廣明  いわき市平下大越

15 坂本 俊雄  いわき市平下大越

16 木田 健二  いわき市平下大越

17 木田 耕太郎 いわき市平下大越

18     坂本 善市          いわき市平藤間

19     鈴木 常治          いわき市平藤間

20     鈴木 茂雄          いわき市平藤間

21     阿部 一               いわき市平藤間

22     脇坂 昭               いわき市平下高久

23    坂本 喜男          いわき市平下高久

24    鈴木 良政          いわき市平下高久

25    根本 昇               いわき市平下高久

26    本馬 治               いわき市平下高久

27   筥崎 寿夫          いわき市平下高久

28   箱﨑 三洋          いわき市平下高久

29   宮内 喜三          いわき市平赤井

30   岡田 和則          いわき市平赤井

(2)各種資格取得情報

◆監督、施工、設計に係る有資格

土地改良換地士

一級土木施工管理技士

二級建築施工管理技士

◆直営施工工事に係る有資格

玉掛技能講習修了証

小型移動式クレーン運転技能講習修了証

車両系建設機械(整地・運搬・積込・掘削)運転技能講習修了証

はい作業主任者技能講習修了証

ガス溶接技能講習修了証

第一種圧力容器作業主任者技能講習修了証

第ニ種酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了証

不整地運搬車運転技能講習修了証

コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習修了証

車両系建設機械(解体)運転技能講習修了証

フォークリフト運転技能講習修了証

型わく支保工の組立等作業主任者技能講習修了証

コンクリート橋架設等作業主任者技能講習修了証

4級小型船舶操縦士

足場の組立等作業主任者技能講習修了証

土止支保工作業主任者技能講習修了証

地山の掘削作業主任者技能講習修了証

高所作業車運転技能講習修了証

乙種第4類危険物取扱者免状

木造建築物の組立等

作業主任者技能講習修了証

建築物等の鉄骨の組立て等

作業主任者技能講習修了証

刈払機作業安全衛生教育修了証

伐木等の業務に関する特別教育修了証

車両系建設機械(解体)運転技能特別講習修了証(1種)

❻ 組合員

1 組合員の資格

 定款第3条の地区内にある法第3条に規定する資格者は全て改良区の組合員となる。(法11条)

その組合員となった者がその後3条資格を失ったとき以外は任意には組合員でなくなることは出来ず、法に規定する権利義務を負う。

組合員資格者は、法3条では、土地の所有者又は使用収益権者のいずれかに定められるが、当区は、事業の円滑な施行を図るため、所有権者を組合員資格者としている。

2 組合員の権利

 ●議決権及び選挙権(土地改良法31条)

所有面積、耕作面積に関係なく平等の議決権及び選挙権を有す。

●書簿の閲覧請求権(法29条第4項)

改良区に備える定款、諸規程、事業関係書類、土地原簿、組合員名簿、議事録等の閲覧請求権を有す。

●総代の解職請求権(法24条)

総代選出後の事態が組合員の信託に反すると認められるに至ったときは、総組合員の3分の1以上の連署をもって総代の解職を請求することができる。

●総代会の招集請求権(法26条)

組合員は、総組合員の5分の1以上の同意を得て、会議の目的及び招集理由を記載した書面を改良区に提出して総代会の招集を求めることができる。

この場合、理事は総代会を招集しなければならない。

●役員の改選請求権(法29条の3)

組合員は、役員が法令に基づいて行う行政庁の処分、定款、規約等の諸規程又は総代会の議決等に違反したと認められるときは、総組合員の5分の1以上の請求により、違反を行った役員について改選請求をすることができる。

●改良区の事業、会計の状況の検査請求権(法133条)

組合員は、総組合員の10分の1以上の同意を得て、改良区の事業又は会計が法令、定款等に違反する疑いがあることを理由として検査の請求をした場合は、知事は、その改良区の検査をしなければならない。

等がある。

3 組合員の義務

 ●経費負担の義務(法36条)

改良区の事業に要する経費と運営に要する経費は、原則として組合員が負担することとなる。(一部は国、県、市からの補助金等を充当の場合もある。)

なお、この経費は金銭徴収を原則とするが、事業の状況によっては労力や現品によるのが便益な場合もあるので、夫役現品の賦課徴収も認めている。

●権利義務の承継及び決済(法42条)

組合員が組合員の資格に係る権利の目的たる土地の資格を喪失した場合には、その土地に係る当該改良区の権利義務は、その土地について組合員たる資格を取得したものに移転する。また、その土地を失った組合員は、当該土地改良区の事業に関する権利義務について決済しなければならない。

●組合員の資格得失の通知義務(法43条)

改良区の組合員たる資格得失の原因は、地区内の土地についての権利移動(売買、権利設定、経営譲渡等)であるが、組合員が通知しない限り改良区はこれを確認する方法がないので、組合員たる資格を得失した者に通知の義務を課している。

等がある。

❼ 総代会

総代会は、「改良区としての意志決定を行う」最高議決機関であり、毎年度1回3月に通常総代会を開催することになっている。

理事が必要と認めるときは、何度でも臨時総代会を招集することができる。(法25条第1項、第2項、則26条、定款第13条)

組合員は、総代を通じて自己の意志を反映させることができ、総会に代わる意志決定機関である。(法23条)

組合員が、総組合員の5分の1以上の同意を得て、会議の目的及び招集理由を記載した書面を改良区に提出して総代会の招集を請求したときは、理事は、その請求のあった日から20日以内に総代会を招集しなければならない。(法26条)

また、監事による総代会の招集については法第27条に規定している。

総代の定数は、30名としている。(定款8条)

総代会の議決事項

「次に揚げる事項は、総代会の議決を経なければならない。」と定めています。

●定款の変更

●規約又は法第57条の2第1項に規定する管理規定の設定、変更又は廃止

●起債又は借入金の借入並びにそれらの方法、利率及び償還の方法

●経費の収支予算

●予算をもって定めたものを除く外、改良区の負担となるべき契約

●賦課金及び夫役現品の賦課徴収の方法(賦課基準日、賦課の目的、賦課対象面積、10a当り単価、納期等を明確にすること。なお、事業種別毎に賦課額の異なる場合には、それぞれ組合員にわかりやすく区分する等とすること。

●事業報告書、収支決算書及び財産目録の承認

●改良区連合の設立及びその所属改良区の数の増減につき、所属改良区が協議して定める事項

●土地改良施設の国又は県への管理の申出

●土地改良事業計画の制定若しくは変更、施設更新事業若しくは関連施行の申請又は土地改良事業の廃止

●解散又は合併

●役員の改選

等がある。

❽ 理事会・監事会

改良区役員定数は、理事5人、監事2人となっている。(定款19条)

役員は、組合員の中から総代が総代会において選任することになっている。(定款20条)

また、理事定数のうち、3人は、組合員であって耕作又は養畜の業務を営む者(組合員である法人の業務を執行する役員を含む。)とする。(法18条第5項、定款19条第2項)

なお、監事定数のうち、1人は法第18条第6項各号の全てに該当する者とする。(定款19条第3項)

役員と改良区との間の基本的関係は、民法上のいわゆる委任関係であり、役員は改良区に対し、「善管注意義務」を負うことになり、法律、法令に基づいてする行政庁の処分、定款、規約、管理規程及び総代会の決議を遵守し、改良区のために忠実にその職務を遂行することが義務付けられている。

役員がその義務に違反し、その任務を怠ったときは、その役員は改良区に対し連帯して損害賠償の責任を負う。

また、役員がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったとき、その役員は第三者に対し連帯して損害賠償の責任を負う。(法19条の2、民44条第1項、54条、55条、59条、415条、644条)

1 理事

 理事の職務権限は法人代表(対外的権限)と業務執行とに別れる。理事は改良区を代表し、理事が改良区の代表として行った法律行為は、直接その権利業務関係が改良区に帰属する。

理事の代表権の範囲は、原則として改良区の行為能力の範囲内でその一切の事務に及ぶ、理事は、原則として単独代表である。

したがって定款及び総代会の議決で特に改良区を代表する理事(理事長)を定めたり、数人の理事が共同して代表すべきことを定めたりして、その例外を設けることが出来るが、その権限は、理事の一般代表機関たる本質に反しない程度であることを要し、又その制限は善意の第三者に対抗することが出来ない。

理事は改良区の業務執行についての意志決定は定款に別段の定めがないときは理事の過半数で決める。

改良区の運営について重要な事項は、全てこの理事会で協議、決議されるわけであるから、理事会こそ改良区の運営の中心である。

したがって、改良区の運営は理事が互いに協力し合って理事会を中心に業務執行機関としての役割を果たすように協力することが必要である。

2 監事

監事は理事と同様に定款の定めにより、総代会において選任により、組合員の信頼を得て選出された組合員の代表である。

監査にあたる役員としての監事は、理事の場合と全く同様に改良区とは委任の関係にあるとされ、その任務は、事業運営を担当していない目付的立場にある監事が理事の行う改良区の業務の執行、組織、運営、会計経理、財産の状況の各般にわたって監査して検討を加え、その適否及び改善刷新を要する事項を明らかにし、不備、欠陥は是正させて改良区の運営を円滑かつ適正に導く、対外的にも重要な役割を果たすものである。

理事が組織する理事会と同様に、監事は監事会を組織する。

❾その他表彰歴

年月日・名称・受賞者名(主催者名)

平成17年10月26日・平成17年度21世紀土地改良区創造運動大賞・愛谷堰土地改良区(全国土地改良団体連合会長)

平成18年10月1日・平成18年度いわき市市政功労表彰「元気あふれるふるさとづくり賞」・愛谷江筋愛護会(いわき市長)

平成20年4月23日・環境保全善行賞・愛谷江筋愛護会(ライオンズクラブ国際協会332-D地区ガバナー、環境保全・アクティビティ委員長、いわき中央ライオンズクラブ)

平成20年11月19日・みんゆう環境賞・愛谷江筋愛護会(福島民友新聞社)

平成29年7月24日・第1回インフラメンテナンス大賞「優秀賞」・愛谷堰土地改良区(インフラメンテナンス大賞選考委員会)